「建設労働者が寄宿する飯場とその制度は、日本の近代化のなかで形作られてきたものです。ところが、その原型となる戦前の監獄部屋(タコ部屋)を記録したものや、日雇い労働者の寄せ場などの研究のなかで、短く考察されているものは幾つかあるものの、実地に飯場へ踏み込んだうえで研究をまとめた書というのは、本書のほかに例をみないと思います」 先日、渡辺拓也さんが出版した『飯場へ』は、フィールドワークで渡辺さんが数カ所の飯場に入って働き、そこで得た経験や観察から、様々な分析を試みた書だ。 「もともとは大阪各地の公園に点在しているテント村の研究をしていたのですが、ある時、ホームレスをしていた職人さんに“飯場に入ってみないとワシらのことは分からない”と言われたことがきっかけでした。私も飯場に入る前は、しんどそうとか、上下関係がきつそうとか、鬼のように搾取しているんじゃないか、というマイナスのイメージがありました。