タグ

ブックマーク / honz.jp (154)

  • 「箱根本箱」へ、ブラHONZしてきました - HONZ

    はーい、こんにちは。ブラHONZ、はじめます~。 メンバーが“ブラブラ”と世界を巡りながら、知られざる歴史や成り立ちに迫る「ブラHONZ」。迫る前に泥酔してしまうかもしれませんが、誰もやらないので、深い意味も展望もなくスタートしちゃうことにしました。今回は、地形もバラエティに富む箱根へ。なんとがたくさん詰まったホテルが箱根にできたというのです。 さて、それを聞いたのは、メンバーのフルハタミズホからでした。 その名も「ブックホテル箱根箱」。取次会社の日販の保養所を改装し、「自遊人」が運営してオープンさせた、の森に眠ることができ、温泉にも入れる宿泊施設です。2018年8月1日にオープン、私たちが出かけたのは11ヶ月が過ぎようという2019年夏はじめ。フルハタによれば「夕のイタリアンが超絶美味い」とのことで、もうそうなると、天国と呼んでいいのではないでしょうか。 これは行ってみねば

    「箱根本箱」へ、ブラHONZしてきました - HONZ
  • 『誰が音楽をタダにした?』ストリーミング・サービスがもたらした「音楽シーン」の変化と現状 文庫解説 by 宇野 維正 - HONZ

    『誰が音楽をタダにした?』ストリーミング・サービスがもたらした「音楽シーン」の変化と現状文庫解説 by 宇野 維正 自分も含め、音楽ジャーナリストやライターがよく用いる便利で安易な言葉の一つに「音楽シーン」という言葉がある。同時代のミュージシャンや作品の傾向だったり、音楽業界やマーケットの動向だったりを表す言葉。実際のところ、そのうちのどれを指しているのかが 曖昧な言葉で、そこを曖昧にしたまま論を先に進める際に用いられがちな言葉だ。 スティーヴン・ウィットが書で明らかにしていく「シーン」は、いわゆる「音楽シーン」のことではない。それは明確に「発売前のコンテンツをインターネットで流しているグループ」のことを意味している。その音楽作品や映画作品がそれぞれの歴史や同時代においてどのような価値があるのか、そしてその作品のどこを個人的に評価するか。そのようなアートやカルチャーの質には目を向けず、

    『誰が音楽をタダにした?』ストリーミング・サービスがもたらした「音楽シーン」の変化と現状 文庫解説 by 宇野 維正 - HONZ
  • 『言葉の海へ』文庫解説 by 金水 敏 - HONZ

    書は、国語辞典『言海』の編者である大槻文彦の生涯を描いた評伝である。国語辞典と言えば、2011年に、国語辞典の編集に携わる人々を描いた三浦しをんの小説「舟を編む」がヒットし、その後映画化・アニメ化もされた。また2018年には広辞苑第七版が刊行され、新語として取り込まれた項目や、語釈の誤りが報道やネットで取り沙汰されるなど、日人にとって国語辞典は何かと関心の的である。 しかしながら、『言葉の海へ』第一章に描かれた、芝紅葉館での『言海』出版祝賀会の様子は、「関心の的」という言葉では済まされない、異様な政治的緊迫感を漂わせている。なによりその出席者の顔ぶれが、今日の目から見れば奇妙である。伊藤博文、勝安房(海舟)、榎武揚、谷干城、加藤弘之、物集高見、伊達宗敦、松平正直その他、歴史の教科書を賑わせる幕末・明治の元勲が賑々しく列席している(その顔ぶれは、薩長系というよりは旧幕臣、藩侯系に偏るの

    『言葉の海へ』文庫解説 by 金水 敏 - HONZ
  • 言葉の解釈をめぐる、解決困難な諸問題──『自動人形の城: 人工知能の意図理解をめぐる物語』 - HONZ

    書は、同著者による数学的原理に裏打ちされた傑作ファンタジィ『白と黒のとびら: オートマトンと形式言語をめぐる冒険』、その続篇『精霊の箱: チューリングマシンをめぐる冒険』とはまた違った物語──副題にもある通り、命令を何でもこなしてくれるスゴイ人工知能をつくる上で避けては通れない、コミュニケーションにおける人工知能の意図理解についての一冊である。 図や数式は一切なく、ワガママで勉強嫌いな王子と、彼の住まうクリオ城へと危機が迫り、「人間の命令を忠実に実行する」自動人形に囲まれた、王子の孤独な戦いがはじまる──。といったファンタジィとも童話ともいえる物語を純粋に楽しみながら読み進めるうちに、人と機械のコミュニケーション時に不可避的に発生する、「意図の理解」をめぐる難しさ、自然言語で機械に対して命令する際、原理的に出現する諸問題が把握できてしまうという優れものだ。 作の「人形」は、現実世界では

    言葉の解釈をめぐる、解決困難な諸問題──『自動人形の城: 人工知能の意図理解をめぐる物語』 - HONZ
  • Imagine there's no cars. 『対岸のヴェネツィア』 - HONZ

    振り返るのはまだ早いが、今年は『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』と『未来の年表 人口減少日でこれから起きること』というが、とにかく良く売れた。100歳まで生きるという前提で人生設計を組み直す必要があることや、少子高齢化を前提とした働き方に変えなければならないことは、良くわかった。 その他にも変化はいくつもあるが、ガソリン車から電気自動車への切り替えトレンドが大きく進展した。そればかりか、車がほとんど必要とされなくなる未来もあるのではないか、という見方も出てきた。若い人たちはあまり車に乗らなくなり、DMMが共同馬主事業を始め、社会的成功の象徴はふたたび車から馬に戻ろうとしている。というのは競馬好きの幻想か。 枕が脱線しすぎた。次の一文のインパクトを最大限に高める枕のつもりだった。 「水都ヴェネツィアには、車がない」無論、それは言い過ぎだが、基的に移動は徒歩と船だという。そ

    Imagine there's no cars. 『対岸のヴェネツィア』 - HONZ
  • 『世界の広場への旅』みんな同じで、みんな違う - HONZ

    読むと旅に出たくなるがある。想像もつかない場所へ果敢に挑んだ旅行記や、街が美しく描かれた小説を読み始めると、旅の妄想が止まらない。書『世界の広場への旅』は旅行記でも小説でもないが、読み終わったらきっとあなたは旅支度を始めることだろう。 著者は昭和女子大学教授で、これまでに冷戦時代の東欧や青蔵鉄道開通前のチベットなど、延べ86カ国、1,059カ所の広場を調査してきた。一級建築士でもあり、立山町ふれあい農園施設や脇町交流促進施設なども設計していた人物だ。書は四半世紀の年月をかけ、総走行距離71,354km(赤道一周は40,075km)に及んだ研究成果の集大成である。 見開き半分はスケッチ、1/4は広場のある街の情報、残り1/4が文となっており、パラパラと眺めているだけでも楽しめる。そして文は語りかけるような口調で、話が時に逸れながらも広場論を展開されていく。専門的な話ばかりが続くと飽

    『世界の広場への旅』みんな同じで、みんな違う - HONZ
    bookseller56
    bookseller56 2017/09/18
    「広場という視点を通して、世界が一つであることも、世界が多様であることも同時に感じることができる一冊」
  • 『世界からバナナがなくなるまえに 食糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 - HONZ

    『世界からバナナがなくなるまえに 糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 バナナがなくなってしまうだって!? 多くの人にとっては寝耳に水であろうが、しかしこの話、けっしてありえないことではないようである。 現在、人々が口にしているバナナは、その大半が単一の品種、すなわちキャベンディッシュバナナである。そしてそのバナナには、遺伝的な多様性がまったくない。というのも、キャベンディッシュは種子がなく、株分け(新芽を移植すること)をとおして栽培されるからである。それゆえ、「キャベンディッシュバナナはすべて遺伝的に同一であり、スーパーで買うバナナのどれもが、隣に並ぶバナナのクローンなのである」。 だがよく知られているように、そうした遺伝的多様性の低い生物は、天敵などの影響をもろに受けやすい。実際、かつて人々が口にしていたバナナ(グロスミッチェル種)は、「

    『世界からバナナがなくなるまえに 食糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 - HONZ
  • 『図書館100連発』さりげない緻密な工夫がいっぱい - HONZ

    図書館の創意工夫を100種類紹介する書籍である。子供の頃から図書館につれられ、その工夫にひとり微笑んでいた私のような人間には面白おかしく読めるであるが、他に読者が存在するのだろうか。疑問に思って、書を途中で閉じて、図書館に関する統計データを探ってみた。 2016年時点で公共図書館の数は3,300館弱、専任職員は1万人を超える程度である。他に私設の図書館もあるのだろうが、読者母数としては心細い数字だ。と思っていた矢先、小中高の学校には図書館の設置義務があることを学校図書館法によって定められている。また、大学の図書館も加えると、35,000を超える学校図書館がある。 合計40,000近くある図書館。そこで働く方々を読者の中心の据えた、マニアックだがターゲットが鮮明で、確実に役に立つ書籍である。100連発というタイトルは、ニコニコ学会βの発表企画「研究100連発」をヒントにしている。 図書館

    『図書館100連発』さりげない緻密な工夫がいっぱい - HONZ
  • 二次元世界の住人から、三次元はどう見える?──『フラットランド たくさんの次元のものがたり』 - HONZ

    作者:エドウィン.アボット・アボット 翻訳:竹内 薫 出版社:講談社 発売日:2017-05-12 フラットランド。そこは二次元の世界。立体が存在しない、いわば紙の上の世界だ。 そんな世界にも住人は存在する。まず女性は直線で、兵士や下層階級の労働者は二辺の長さが等しい三角形。中産階級は正三角形と、それぞれ形で身分が決定されている──そんな特殊な世界を描きながら、自身の今いる次元の世界から、一つ上、あるいは下の世界がどのように見えるのかを物語として描き出したのが、書『フラットランド たくさんの次元のものがたり』だ。 原書が出版されたのは1884年のイギリスである。当時は評価されなかったというが、「二次元世界の住人」という架空の視点を導入することで次元の質をついた内容が、アインシュタインの相対性理論発表以後、再評価された。書はその日語新訳版である。百年以上前のじゃん! と思うかもしれ

    二次元世界の住人から、三次元はどう見える?──『フラットランド たくさんの次元のものがたり』 - HONZ
  • 『パスポート学』私が私であること、それを証明すること - HONZ

    は迷わず買うほうだが、それでも店頭だとパラパラとページをめくってみたり、少しだけ前書きや後書きを読んでみたりする。そんな中、表紙を見ただけで脊髄反射的にジャケ買い購入してしまうのが、類書がないと思われるだ。この手のは例外なく新しい知見を与えてくれる。だから見つけた瞬間、即購入しなければならない。 書も、そんな即買い物件だった。人類学や歴史学、社会学、政治学、法学などの専門家が集まって、パスポートについてさまざまな角度から検討したまさに邦初の一冊である。 国家とパスポートは切っても切れない関係にある。だからこそ、国の形が変わるときには、おのずとパスポートの形も変わる。 そんな国家とパスポートの変遷を如実に見ることができるのが、旧ユーゴスラビア地域だ。現在のセルビアやモンテネグロ、コソボに住む人々は、この四半世紀の間に、3つないし4つの異なるパスポートを手にすることになった。 特にア

    『パスポート学』私が私であること、それを証明すること - HONZ
  • どこまでを人に任せるべきか──『デジタルアポロ ―月を目指せ 人と機械の挑戦―』 - HONZ

    書は「人と機械がアポロ計画においてどう役割分担をしたのか(そもそも人に役割はあるのか)」という観点から、計算機開発を中心に、人間と機械の協働を分析した一冊になる。アポロ計画に関する歴史を辿る物からマネジメントを分析する物まで山ほど存在するだけに、今更新しいものが読めるのかなあ? と疑問に思っていたのだが、これが滅茶苦茶おもしろい! アポロ計画の技術者は機械設計にどのように人を組み込んだのか? 重大な月面着陸で人を制御にどのように介在させたのか? 人はいつスキルを持った賢い操縦士として働き、いつ飛行規定書に沿って機械のように動いたのか? この”人と機械”の境界線は、無味乾燥とした技術計算だけで成り立っているようにみえるアポロ宇宙船の人間的側面を映し出す。 原書は2008年刊行なので10年近く時間が経っているが、その価値はいささかも減じることがない。それどころか、自動運転車や人工知能との

    どこまでを人に任せるべきか──『デジタルアポロ ―月を目指せ 人と機械の挑戦―』 - HONZ
  • 南極で家を建てるには 『南極建築 1957-2016』 - HONZ

    地球上で、家を建てるのが大変な場所はどこだろう? ジャングル? 砂漠? ツンドラ? 南極や北極? 極地観測のために建てられた南極基地の建築物を、写真と丹念な解説で見せてくれるこの一冊。昭和基地をはじめとする、極限環境での建築の数々は、こんな技術や人に支えられていた! こんなにすごいことをしていたなんて、知らなかった。 このの感想はこの一言に尽きるかもしれない。 南極といえば、高倉健がタロとジロを抱きしめる映画『南極物語』を思い出す人も多いだろう。1911年の、アムンゼンとスコットの壮絶な南極点到達競争を読んだことのある人もいるかもしれない。そういえば私は、「船の科学館」で南極観測船「宗谷」を見学した記憶もある(1979年から保存展示されているが、移設のため、一時的に2017年3月末まで一般公開を休止中。この「宗谷」もまたロマンあふれる船だ)。 と、その程度の知識しかない人でも読み応えじゅ

    南極で家を建てるには 『南極建築 1957-2016』 - HONZ
  • 『わたしと統合失調症 26人の当事者が語る発症のトリガー』リカバリーを生きるということ - HONZ

    私たち当事者は、人として破綻しているわけではなく、ただ「見えない病気になっているだけ」なのです。私は、当事者がこれほどまで無理解な状況におかれている現状に強い憤りを覚えます。 自分のことを言われているような気がして胸がチクチクする。いや、まさに自分のことだ。正直に書いておくが、統合失調症をもっと理解しようと思う自分 vs ちょっと遠慮したいと思う自分のせめぎ合いがいまだ脳内で継続中である。 書は26人の統合失調症当事者=「リカバリーを生きる人々」の体験談と、編者の精神科医・佐竹直子氏の解説により構成されている。 巻頭で編者は、 発症の頃のエピソードは、どんなことが統合失調症のトリガーになるのかだけでなく、発症当時の混沌とした状態と同じ感覚を今まさに抱えている人に、自らに起こっているかもしれない問題を気づかせてくれるかもしれません。また、その人にとってのトリガーとなる出来事は発症後の症状の

    『わたしと統合失調症 26人の当事者が語る発症のトリガー』リカバリーを生きるということ - HONZ
  • 『失われた宗教を生きる人々 中東の秘教を求めて』 - HONZ

    書『Heirs to Forgotten Kingdoms』は、アラビア語とペルシア語を流暢に操り、イギリスおよび国連の外交官を務めた経験をもつ著者ジェラード・ラッセルが、中東の宗教的少数派のコミュニティを訪ねて旅し、現地の言葉で丁寧に話を聞きとって、現代に生きるその姿をまとめあげたものである。 1997年、駆け出しの外交官だった著者は、エジプトに配属されてアラビア語を学んでいた。著者はカトリック教徒で、祈る時にもアラビア語を使えば上達するのではないかと思い、エジプトのキリスト教会であるコプト教会に通い始めた。これが著者と宗教的少数派の初めての出会いだったという。聖テレーズ教会というその教会は、キリスト教徒だけでなく、地元のユダヤ人やムスリムからも愛されていた。そこには、イスラーム教と他の宗教との確かな共存の形があった。 中東といえばイスラーム教一色だと思いがちだが、実は中東は多様な宗教

    『失われた宗教を生きる人々 中東の秘教を求めて』 - HONZ
  • 宇宙植民の可能性を問う──『宇宙倫理学入門──人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか?』 - HONZ

    近年イーロン・マスク率いるスペースX社を筆頭に、民間企業による宇宙開発が加速している背景がある。書は「宇宙倫理学」と書名に(聞き慣れない言葉だ)入っているように、そうやって人間が宇宙に出ていく際に不可避的に発生する倫理/哲学的な問いかけについての一冊だ。 ショートレンジとロングレンジの問いかけ そうした説明だけをきいてなるほど! 宇宙での倫理を問うのねわかるわかる! とはならないだろうから(僕も当然ならなかった)、具体的にその「宇宙倫理学」の中で、どんな問いかけ/議論が存在するのかをざっと紹介してみよう。まず身近な、現在すでに具体的な問題として存在するものでいえば、宇宙における軍備管理、人工衛星から得られる情報の取扱、スペースデブリの処理をめぐる問題、宇宙飛行士その他宇宙滞在者の健康管理についてなどなどがあげられる。 現在でも静止軌道をめぐる取り決めはあるが、今後地球周回軌道上がより希少

    宇宙植民の可能性を問う──『宇宙倫理学入門──人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか?』 - HONZ
  • 『カフェインの真実 賢く利用するために知っておくべきこと』 - HONZ

    著者のマリー・カーペンターは米国でも環境やの安全に対して住民意識が高い先進地域に在住するジャーナリストで、ダムを取り壊した川にサケが還ってきた事例など、環境問題に関する報道も多く手掛けている。 書ではまず、もともとは呪術者や王侯貴族専用の「魔法の薬物」だったチョコレートやコーヒー、お茶など、カフェインの入った飲物が一般大衆にも嗜好品として普及するようになった歴史的過程をたどる。古代には神官や呪術者など、一部の限られた人たちが伝承された専門知識や経験に基づいてカフェインを使いこなしていたと思われるが、現代では一般の人たちも手軽に利用できるようになり、カフェインにまつわるさまざまな問題が生じている。著者はそうした悲喜劇を数多くの事例を交えて取り上げている。現代社会でカフェイン問題が生じている根的な原因は、誰もが魔法の粉を簡単に手に入れることができるようになったにもかかわらず、私たち一般

    『カフェインの真実 賢く利用するために知っておくべきこと』 - HONZ
    bookseller56
    bookseller56 2016/12/15
    訳者あとがき
  • 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』は、ここまでの作家人生の、一つのピリオドとなる作品になりました。 - HONZ

    『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』は、2007年に起きた凄惨な強盗殺人事件を、被害者の磯谷利恵さんの人生を軸にたどったノンフィクションだ。すでにHONZでもレビューが掲載され、大きな話題を呼んでいる。これまで4作の作品を書いてきた大崎善生さんは、5作目の題材に選んだ作を「作家人生のピリオド」とまでいう。その言葉の裏側には、どのような思いがあったのか?(HONZ編集部) ――『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』は、2007年に起きた凄惨な強盗殺人事件を、被害者の磯谷利恵さんの人生を軸にたどるノンフィクションです。この事件を題材にしようと思われたきっかけはなんだったのでしょうか。 大崎 この事件は、私の息子が2歳のときに起こったんです。その当時、私はいつも午前中、子どもをあやしながらワイドショーを見るような生活をしていたんですよね。この事件は闇サイトで集まった無関係の男たちが起こしたも

    『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』は、ここまでの作家人生の、一つのピリオドとなる作品になりました。 - HONZ
  • 慟哭のノンフィクション 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 - HONZ

    大崎善生は大好きな作家の一人である。もちろん最初の一冊はあの『聖の青春』で、いきなりファンになってしまった。以後、著作のほとんどを読んでいる。どのも面白いのだが、なかでも、稀代のSM作家・団鬼六を描いた『赦す人』などは、誰にでも勧めたくなる出色のノンフィクションだ。 いちばん好きな作品は、短編集に収められた『優しい子よ』である。重い病に冒された子どもとの交流に題材をとった私小説は、大崎の作品に限らず、これまでに読んだの中で最高に泣けたである。いや、である、ではなくて、今や過去形だ。『いつかの夏』がいちばん泣けたの座を奪ったのである。何度も何度も嗚咽をこらえられないほど泣いたのは、このが初めてだ。 2007年におきた『名古屋闇サイト殺人事件』は、ネットで知り合った見知らぬ同士がおこした事件であったこと、まったく面識のない罪なき女性が帰宅途中で犠牲者になったこと、そして、その殺人方法

    慟哭のノンフィクション 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 - HONZ
  • 『ブロックチェーン・レボリューション』夢のつづき - HONZ

    ──こんな立派なの解説って、大丈夫なんですか。 いや。だいぶ不安なんですけど。 ──そういうときは断りましょうよ。なんで引き受けちゃったんですか。ブロックチェーン、詳しいんですか。 いや、そうでもないです(苦笑)。 ──そもそも、なんで頼まれたんですか。 いや、ぼくが編集長を務めてる『WIRED』日版というメディアで、ちょうどブロックチェーンの特集をやったんですね。2016年の10月に。そのなかで、ドン・タプスコット氏にインタビューをして巻頭に掲載したので、そういうご縁ですね。 ──ということは、タプスコット氏のことも、この『ブロックチェーン・レボリューション』のことも、あらかじめ知ってたわけですね。 タプスコットさんの名前は、デジタル・シンカーのひとりとしてはもちろん知ってたんですけど、彼がブロックチェーンの一種のグールーになってることは実は知らなくて、こののことは知り合いに教え

    『ブロックチェーン・レボリューション』夢のつづき - HONZ
  • 不健康な脳から健康な心を推論する──『脳はいかに意識をつくるのか』 - HONZ

    近年機能的磁気共鳴画像法(fMRI)など新技術の出現で脳の活動がより精確に観測できるようになり、脳科学/神経科学は飛躍的に進歩した。そうなると気になるのは、我々が「意識」や「心」と言っているものはいったいなんなんだという問いかけである。 幾つもの神経科学方面のがその謎に挑んでいるが、書は「機能不全に陥った脳を調べ、健康な脳と比較・検証することで心を推論する」こと。また脳が受け取った情報の純粋に客観的な処理を、主観的な「心」に変換する時に何が起こっているのかを追求し、「哲学」と「神経科学」の融合した「神経哲学」分野を切り開いてみせた野心的な一冊である。 私の目的は、不健康な脳から健康な脳を推論することだ。それによって、哲学者が心や脳と呼ぶものを的確に記述するために、現在の哲学的概念を変える必要があるのか、そしてその必要があるのなら、いかにしてかがわかるだろう。 不健康な脳から健康な脳を推

    不健康な脳から健康な心を推論する──『脳はいかに意識をつくるのか』 - HONZ