■友情とすれ違い、繊細に描く 自己紹介というのはなかなか緊張するものだ。とりわけ、中学や高校に入学して最初のそれはハードルが高い。 本作もまさにそういう場面から始まる。高校入学初日、心臓が飛び出しそうなほど緊張しつつ自己紹介に立った大島志乃。しかし、彼女の口からは言葉が出てこない。必死で名前を言おうとするも〈おっおっおっ!〉と詰まってしまう。その姿に教室は爆笑の渦。先生は〈ふざけてないで〉とあきれ顔だ。 もちろん彼女はふざけているわけではない。作中では明記されないが、いわゆる吃音(きつおん)症である。ただでさえうまくしゃべれないのに、コンプレックスからますます人と話せない。そんな彼女がやっとの思いで見つけた友達との友情とすれ違いを、繊細かつ痛烈に描き出す。 志乃の吃音が前面に出てはいるが、友達の加代も、2人の間に割り込んでくる男子も、どこかしら対人コミュニケーションに難がある。それは多かれ
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