司会や運営をおこなうボランティアとして参加した著者が、その経験を詳細に書いたノンフィクション。素晴らしい本だった。 そして、あまり他の本では感じないことが多く、珍しい読書体験ができた。出会って損はさせない本だ。それでこの文章も、書くのにずいぶんかかってしまった。まずは概要から、簡単に説明しよう。 どこかの大学の何かの研究で、「文学作品を味わうことは、共感する力や社会性が高まる助けになる」というような結果があるようだ。本書はそのことについて触れ、刑務所で読書会をやることの意義について書いている。登場人物の視点に没頭したり、舞台を想像したり、今とは違う時代のことを考えたりして名著・傑作を読む機会が多くなれば、そういうこともあるのだろう。 熱心に刑務所での読書会を運営し、寄付を集めたり選書をおこなっている友達にさそわれて、著者は2011年、読書会ボランティアを始める。読書会は月に1度で、それまで