引き続き、『この世界の片隅に』から関心を広げて、戦争小説を読んでいる。先に古処誠二『死んでも負けない』を挙げたが、同じ古処の『線』を読む。 アジア・太平洋戦争における南方戦線、開戦当初の時期での、現在のパプア・ニューギニアでの旧日本軍によるポートモレスビー攻略を描いた小説である。 ◯話の短編がまとめられたオムニバス形式で、主人公がすべて違う。そして、掲載の順番と戦争の時系列がだいたい一致している。 飢餓とマラリアのイメージ 本作を読んで戦争(ポートモレスビー攻略戦)の印象は、補給と輸送が困難を極め、ひたすらマラリアと戦傷に悩まされた戦争であったのだなあということである。最終話近くの状況、包囲された日本軍のいた地域全体に処理されない死体、糞便、泥水が溢れ、その中を飢え・病気・負傷に苦しむ生者がいるという、まさに生き地獄のイメージが強く残った。 初めは死んだ兵を、穴を掘って埋めたが、やがてただ
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