「 藤村さん、“一箱古本市”って知ってる? そう、東京の谷根千界隈で始まった古本の路上フリーマーケット。ああいうお祭り的なイベントをね、福岡でもやれたらいいなって思うんですよ」 今から11年前、2006年の春先のことである。福岡・赤坂の個人書店「ブックスキューブリック」の店主・大井実氏が、やおら熱く語り始めた。場所はキューブリック近くの小さな立ち飲み屋。メンツは大井氏と私、それにネットで古書店を営む女性の3人だった。酔っ払うにはまだ早い時間だったように思う。 「確かに面白そうだけど…お客さんが来ますかねぇ……」 大井氏は以前から「半径1.5㎞以内のお客を相手に(書店を)成立させたい」、「街のコミュニティーづくりには本屋が不可欠」を持論にしていた。ご存じの方も多いと思うが、“一箱古本市”は2005年からライターで編集者の南陀楼綾繁さんや往来堂書店の笈入建志さんを中心に活動を始めた「不忍ブック