『桃太郎』という作品をご存知だろうか?川に流れていた桃を叩き割るとそこにエスパー伊藤かの如く怪しげな人間が潜んでおり、その人間が動物の力を借りて鬼を一匹残らず抹殺するという、有名な作品だ。 この桃太郎という作品は完成度の高い創作物語として一定の市民権を得ているが、一つだけある深刻な問題を抱えている。それは、川へ洗濯に出向いたお婆さんが桃を見つけるあの有名なシーンにおける、桃が流れてくる様を言い表した不気味な擬態語、「ドンブラコ、ドンブラコ」である。 作中では特段の注釈もなく、何事もなかったかのように「桃がドンブラコと流れてきました」と書かれているが、一方、現実問題として、「ドンブラコ」などという謎の日本語は、この桃太郎という物語以外では全く聞いた事がない。ドンブラコ。桃がドンブラコ。 それまで気持ちよく桃太郎を読んできた読者は、この突然の「ドンブラコ」で置き去りにされてしまう。「ドンブラコ