鉄条網に視点をしぼった一冊ということで、なかなかマニアックな内容だとは思う。だが米国では鉄条網を収集するマニアが多いのだという。多いって、どれぐらいだよとは疑問に思うものの、まあ数万人単位では存在しているのではなかろうか。鉄条網を収集するって、なんのためにだよ、と思うが多かれ少なかれ収集癖などというものは同好の士以外には理解されにくいものだろう。 さて──本書は、意外なほどおもしろかった。鉄条網という超ローテクな資材が持っているシンプルな機能──「短時間に、広大な面積を、安価に、厳重に囲い込む」はそのシンプルさゆえに様々な利用シーンで役に立ち、人の生活や戦闘を一変させてきたのだ。 鉄条網の当初の目的は農牧場を覆うことだった。家畜を逃がさないようにし、境界を明確にする。しかもすぐに設置できるから、コストもほとんどかからない。そのおかげでカウボーイが牛を追っていく姿はあっという間にきえ、鉄条網