私たちの社会には、『善』のイメージに強烈に紐づいた言葉がある。 たとえば、『平和』や『民主主義』といった言葉がそうだ。 もし私がここで、「平和は善ではない」とか「私は反民主主義者である」と書けば、おそらく読んでいるあなたは拒否反応を示すだろう。 私の人間性が疑われることは、想像に難くない。 善とほぼ同義語の言葉に対して反論を示すことは、「悪」にみなされるリスクがある。 だから、正直に告白すると、私はこの記事で『反共感論』という本をオススメする書評を書くことに、少し躊躇してしまった。 『共感』は、「平和」や「民主主義」と同じように、好ましいイメージに強く結びついている。 一般的に他者への共感は、親切や思いやり、寄付といった善行の前駆であり、共感性の欠如は、殺人や強姦、残虐行為といった悪行の原因であると考えられている。 だから、『共感は善ではなく、むしろ残虐行為の前駆にもなり得る』という著者の
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