■人類の智恵から見る危機感 既成事実を作りさえすれば、なし崩しで事が運ぶ。そんな記事が今日も躍る。「この道」は、いつか来た道。それを振り返るのに好適な書物が、北岡伸一『清沢洌』である。戦前に在野の外交評論家として活躍した清沢洌の評伝。歴史家としての著者本来の美質がよく現れている。 印象的なのは、清沢が、外交関係を単純な構図で一元化することを、批判し続けたという事実。欧州と南米とアジアとでは異なる外交原則で臨む米国に対しては、その矛盾をつく外交によって対処すべきだというのが、彼の持論だった。グローバルな対米牽制(けんせい)策である(独伊との)三国同盟路線にのめり込んで、外交関係が一元化されてしまえば、中国の方を向いていたはずの日本も、必ずや欧州での対立構図に「巻き込まれ」て、対米開戦を余儀なくされる、と。歴史は、清沢の卓見通りに動いた。 本書の著者は、安保法制懇の座長代理としての活躍でも知ら
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