前回のこのコラムは、事ここに及んで全く無効になってしまった「民主主義」という地平線の向こう側に「神権政治」を巡る再解釈の必要性を示唆したところで終わった。今回はその続きということになるわけだが、予告していたとおり、いきなりスピノザの議論に入るのではなく、その大前提を議論しておくことにしたいと思う。 その「大前提」とは何を隠そう、これまでの時代はあまりにも幸せだったということである。ここでいう「これまでの時代」とは、18世紀も後半から「つい先日(Only Yesterday)」までの期間を指す。 それではなぜこの時代があまりにも幸せだったのかというと、地球全体が相対的な意味で温暖期だったからである。もちろん浮き沈みはあるものの、「温暖期」である以上、総じて人々は食べ物には困らない。飢えというものが問題になる度合いが(これまた相対的にではあるけれども)減ってくる。したがってイングルハートではな