大江健三郎が88歳で老衰のため逝去という報を目にして、しばし茫然とするばかり。何とも言い難い虚脱感のような感覚に捕われ、仕事に身が入らない状況だ。 この報を目にしたのがつい先日であったので、おそらく、葬儀その他諸々の行事を親族だけで済ませて一旦落ち着いたところで公表したということなのだろう。年齢が年齢だけに、いつこのような事態が訪れても不思議ではなかったものの、いざ現実を突きつけられると、茫然自失状態に襲われるよりほかなかった。 高校生の時に読んだ『芽むしり仔撃ち』に衝撃を受けてから、ほぼすべての作品を読み親しんできた者として、そのあまりに偉大な文学的業績を残した現代世界文学最高の作家の喪失をどう受け止めていいのか。巨星墜つ、戦後日本文学は終わりを告げた。 ただ、若い頃から自裁の念に取りつかれてきた大作家が、そうした悲劇を迎えるのではなく、老衰というかたちで天寿を全うしたということに、『燃