一昔前、平日昼間のスーパーの買い物客と言えば、主婦だけだった。伊丹十三の映画『スーパーの女』(1996)に登場する客も、ほとんどそういうおばさんたち。新聞のチラシを見て、午前中に買い物に行く専業主婦だ。 今では、スーパーの買い物客は多種多様。私の住む地方都市のスーパーでは、平日の昼間、定年退職したと思しき中高年男性が一人で買い物している姿をよく見かける。たまに、奥さんのお使いで来たのかメモを見つつキョロキョロしながら買っている人もいるが、大抵は「いつも買い物している人だな」とわかる慣れた風だ。 カートを押してサッサと目当ての売り場から売り場へと移動し、真剣な眼差しで食材を吟味し、日付を確かめてカゴに入れ、レジでは釣り銭が少なくて済むよう小銭を細かく出し、ポイントカードも出し、大きなエコバッグに手際良く品物を詰め、カートを所定の場所に戻してからスタスタと駐車場に向かう白髪のおじさん。本日のミ