古着屋には古着屋のニオイがある。あの強力な、ムワッとした、カビくさいニオイ。ここにある服のかつての持ち主は、きっと今よぼよぼなんだろう(もしくは鬼籍に入っているのだろう)と思わせる雄弁なニオイだ。 しかし、あの独特のニオイって、いったいどこから発生しているのだろう? そして、世界中どの古着屋に行ってもあのニオイがするのはなぜなのだろう? 私はそれを探るため、イタリアのクルーズ客船会社、日本の自動車メーカー、コロンビアの銀行のために香りを生み出してきた〈Aromaco〉の創業者で、香りの専門家、サイモン・ハロップ氏に質問をしてみた。 ──サイモンさん、こんにちは。あなたがアロマ業界に参入して、何年になるんでしょうか。 サイモン・ハロップ:この会社を始めたのが1993年なので、もう25年以上になります。でも古着屋の匂いを再現してほしいという依頼は受けたことがありませんね、正直なところ。 ──可