米国務省が2月に発表した世界の人権状況に関する報告書は、日本におけるトラフィッキング(人身売買)の深刻さを浮き彫りにした。報告書は、タイ、フィリピンなど東南アジアをはじめとする世界中の女性や子どもが、年間20万人のペースで、性的搾取や強制労働の目的で日本に「密輸」されていると指摘。日本を先進国で唯一の人身売買「監視対象国」とした昨年6月の別の報告書に続き、政府の対応を厳しく批判した。 国際社会の反・人身売買の潮流に同調する形で、政府は「人身売買罪」の新設を今国会に諮るなど対策を進めつつある。こうした動きは一定の評価ができる一方、人身売買発生の根本原因とも言える、日本の移民政策の二重性に焦点が当たっていない点が問題である。表面上外国人労働者を拒みながら、実際は社会の底辺を彼らに支えられているという構造が改善されない限り、人身売買問題が解消されることはないだろう。 母国で貧しさに窮して