よしながふみ『愛すべき娘たち』 感想続編 前稿のつづきである(ここもネタバレあり)。 やー、やはり第3話に「マルクス主義者」が出てくるのだから、マルキストとして言わいでおくべきか。 第3話の主人公、若林莢子(さやこ)は、本巻中はもちろん、近年の漫画表現を(管見だが)見渡してみても、もっとも美しく造形された形象の一つであろう。 莢子は、祖父を心から尊敬している。 祖父は戦前投獄され、節と思想をまげなかった不屈の人で、戦後は大学教授をつとめてきた。 その祖父が莢子にいったこと――「決して人を分け隔てしてはいけないよ いかなる理由があっても人を差別してはいけない 全ての人に等しくよくしてあげなさい」――は、莢子の人生の指針となる。 望月玲子が、以前、「ヤングユー」誌に唐突に戦前の共産党員で、投獄・拷問をうけ、いまは老人となっている男性を描いたことがある。 見事なまでの志操のまっすぐさ、というもの