3期生　藤井祐子『大型野外イベントの文化史――現代日本に残るロック・フェスティバル の思想とビジネス・システム――』 序論 1.　ロック・フェスティバルとは何か 本論文は、「ロック・フェスティバル」と言う、多くの人が聞き慣れないであろうイベントについて、分析を行うものである。「ロック」と言えば、1950年代のアメリカで始まったと知られているが、今日では、世界中で多くの若者の主流となっている音楽である。あまり知られていないかもしれないが、この「ロックの祭り」は、実は、毎年夏になると、日本の各地で、大小さまざまな規模で行われている。ジャズ・フェスティバルほどの長い歴史は持っていないものの、入場者延べ10万人を超えるほどの大規模なロック・フェスティバルも存在し、安定的な延びを見せているものが多い（図1−1）。経済効果や地域振興などの視点から考えても、大きな注目を集めるものとなっている（図1−2