函館に古くからあるラーメン店や食堂のメニュー表を開くと、「ラーメン ○○円」と書いてあることがよくある。これを注文すると、まず間違いなく塩ラーメンが出てくる。醤油ラーメンと味噌ラーメンはその通りの名前でメニュー表に書かれているが、塩ラーメンだけは「ラーメン」。それだけ、函館では「ラーメン」といえば塩味が昔から定着しているのだ。 そんな函館の温泉街である湯の川からほど近い場所にあるのは、塩と豚に並々ならぬこだわりを持つ店「グリル塩豚(えんとん)」。同店の人気メニューは、一杯300円という驚きの塩ラーメンである。 味が染み出るチャーシュー付きで300円! 「お値段なりの量か味かなんだろう」などと思いながら注文。しばらくして出てきたのは、ごくごく普通の1人前のラーメンだ。澄んだスープを一口飲むと、雑味のないあっさりとした塩味が口に広がり、後からふんわりとショウガの風味が鼻腔(びこう)を刺激する。