91年以降のバブル崩壊の過程での最大の問題の一つは、金融機関の不良債権問題であった。この不良債権問題への視点は、「不良債権がどの程度なのか」という実態認識の問題、「不良債権の存在が経済活動をどの程度制約しているか」という経済的影響の問題、そして「不良債権をどう処理するか」という対応策の問題に分かれる。まずは実態認識がしっかりしていないと話にならないのだが、正直なところ、93年1月に内国調査課長に就任してしばらくの間、私は、不良債権問題の深刻さをあまり認識していなかった。その深刻さに気が付いたのは、内国調査課でこの問題についての分析を試みた時に、大蔵省銀行局から、やや常軌を逸する激しい抗議を受けた時である。「所管部局がこれほど神経を使うということは、随分と深刻な問題なんだな」と思ったのである。 大蔵省からの抗議で知った不良債権問題の深刻さ 内国調査課では、93年の白書が一段落した後、年末にか