・日本の歴史をよみなおす 「聖徳太子は倭人であっても日本人ではない」 中世までの日本史観を大きく変えた網野善彦の名著の文庫版。続編も収録。 日本の社会は十四世紀の南北朝動乱以前と以降では大きく変容しており、その転換期を調べることで、中世日本のイメージをとらえなおす。そこには教科書的常識とは大きく異なる、現代と異質の文化・社会が広がっていた。 民衆の生活や風俗に目を向けることで、時代の本質が見えてくる。たとえば被差別対象の非人はかつては違った意味を持っていた。著者は非人とは中世以前はケガレに関する職能であったと指摘する。日本文化のケガレとは「人間と自然のそれなりに均衡のとれた状態に欠損が生じたり、均衡が崩れたとき、それによって人間社会におこる畏れ、不安と結びついている」ものだが、十四世紀を境に社会が文明化されるに従い、ケガレに対する見方が畏怖、畏敬から、汚く汚れた忌避すべきものという現代の感