筆者はパラオで、戦前に日本人だった女性と出会った。彼女を通してパラオと日本の深いつながり、そして歴史を目の当たりにする。 花札に興じる「ふゆこ」さんパラオのコロール市内にあるコミュニティーセンターで、3人のお年寄りの女性が花札で遊んでいた。日本の委任統治時代から伝わる花札は、パラオのお年寄りに人気のゲームだ。「スリーハンドレッド、テッポウ!」。花札の鉄砲という役(※1)を300点で数えていた。横に立って見ていると「日本人?座りなさい」と日本語で言われた。 その中の一人の女性が「私は日本人だったの」と口を開いた。名前を聞くと「くろみやふゆこ。本当は“ふよこ”だけど、パラオの人はふゆこと発音するのよ」。漢字でどう書くのかを尋ねると「漢字は分からないの。子供の時にパラオに残ったから勉強していないの」と答えて少し悲しそうな顔になった。 パラオの人々が遊ぶ花札 戦前、ふゆこさんは建築職人だった父親に