映画『ダブリンの時計職人』より 主演のコルム・ミーニイ(左)、コリン・モーガン(右) 現在ロードショー中の映画『ダブリンの時計職人』。公開を記念して渋谷アップリンクで去る3月26日(水)、近著『アイルランドモノ語り』で読売文学賞を受賞された早稲田大学教授の栩木伸明さんをゲストに迎え、アフタートークが開催された。日本から遠く離れた小さな国で慎ましやかに住む人々の息づかいを描いた本作のバックグランドを、優しい語り口で多方面から紐解いてもらった。 アイルランドの今、新しい問題を扱った作品 この映画はまさに今のアイルランドです。2010年に撮影された作品で、ちょうど僕もその年アイルランドにいたのですが、雪が何度も降って寒い冬でした。それが良く表れています。ダブリンらしい街角のシーンは意図的に出していない。でもダブリンらしい言葉、空気感が出ていますね。何よりも不景気な様子、リーマンショック後のアイル