ここのところマクロ経済学といえば、財政・金融政策の話ばかりだが、Acemogluも指摘するように短期的な安定化と長期的な成長はつながっており、長期的な問題の解決にならない一時しのぎのバラマキは経済力をかえって弱める。特に日本の場合、一時的な需要ショックの局面は終わりつつあり、持続的な潜在成長率をいかに高めるかが次の政権の課題だろう。 ところが成長理論の教科書はAcemogluとかAghion-Howittのように数学的に高度なものが多く、日本語で読める入門的な教科書はジョーンズの10年以上前の本ぐらいしかない。本書は成長理論の第一人者が、最近の動向を数式なしで(!)やさしく解説したもので、教科書ではなく、各国で成長率が大きく異なるのはなぜか、という「成長のミステリー」にテーマを絞ったモノグラフだ。 その答は短くいえば、生産性(TFP)である。国家間の一人あたり所得や成長率の差の半分以上