近畿の方言であると思われるが、青痣ができることを「しぬ」と表現することがある。 実に古い記憶――年齢にして七つ、八つを過ぎないくらいに幼かったころだと思うが――眠るため母とともに布団へ入ったときに、勢いよく母の腕を踏んでしまった。母はツッと息を吸いこんだあとに無言で痛みに耐えていたが、しばらくしたのちに口を開き「これは明日になったら絶対しんでるわ」とつぶやいた。 幼い私はそれが上に書いたような意味を持つ表現だとは知らず、腕を踏みつけたことによって本当に母の命を絶ってしまうのではないかと思い、青ざめた。よくよく考えをめぐらせばそんな程度で人は死なないし、母の口調が死を目の前にした人間のそれでないことはすぐにわかるもの、と今となっては思うが、当時の私は冷静から落ち本当に震えたのだ。そのあとしばらく震える声で「死なんといて」と連呼し泣きじゃくる私を母は笑いながらなだめていた。 −−− 私は先月七