批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。 前回の記事で、理論と現実を混同する人を「ピグマリオン症」と呼ぶと書きましたが、それについて補足説明します。前の記事でも紹介したIMFの職員たちが典型的な事例なのですが、新古典派経済学を「学んだ人(=洗脳された人)」に、この症状にかかった人が多いのです。 「ピグマリオン症」とは私が大学の教養課程のときに読んだ物理学者のJ・L・シンジの『相対性理論の考え方』(講談社ブルーバックス)という本に書いてあった概念です。ギリシア神話には、ピグマリオンが造った象の彫刻があまりにも精巧に出来ていたために、本当に生命を持つようになったというエピソードがあります。シンジは、この話しにちなんで、「現実を説明するモデルでしかないものを、現実に存在する実態であるかのように錯覚してしまう人」をピグマリオン症と呼んで