会社には寿命がないが、事業には寿命がある。その平均はざっと見て30年。太平洋戦争に敗戦した後の復興期に新たな事業を起こして成長した日本企業は、1980年代に主力事業の寿命が尽きた勘定になる。 そこで、新たな成長事業への乗り換え、私が編み出した言葉を使えば、事業立地を変える転地を行う必要に迫られた。だが、多くの企業はそうした現実を直視せず、組織や制度の変更、円高への対応に明け暮れてきた。そして、実に四半世紀もの年月をいたずらに浪費してしまった──。 前回は、こうした日本企業の多くに共通する深刻な病状を指摘し、不毛な組織いじりから脱却して転地に正面から取り組む必要性を訴えた。これから回を重ねるごとに転地という大事業への取り組み方や留意点について解説していくが、今回はその前に、転地をしないとどのような窮地に陥るのかを考察しておきたい。 転地を行わないまま、寿命の過ぎた事業にいつまでもしがみつく。