以前から気になっていた『野中広務 差別と権力』ですが、ようやく読む機会を得ました。 引退後は急速に存在感が薄くなっているので、もう忘れてしまった方もいらっしゃるかもしれませんが、80年代から90年代にかけての日本の政治家の中で異様な存在感を放っていたのが野中氏です。中央政界への登場も極めて遅かった彼が、どうしてあそこまで上り詰めることができたのか。その鍵を被差別部落出身者という角度から読み解くべく、丹念な取材に基づいて構成されたノンフィクション。 ずば抜けた情報収集力を持ち、時に恫喝的な政治手法をとりながら、地方政界から一歩一歩階段を上ってきた野中氏のバックグラウンドに、部落差別を受けていた事実が落としていた影は想像以上に大きかったことでしょう。しかしその出自故の苦労もあって、彼は一方向にイデオロギーを推し進める政治家ではなく、潮目を見ながら世の中を味方につけていくタイプとして地位を築いた