日本における中国系歌手の系譜を考えているのだが、その代表的人物として避けて通れないのが和歌山生まれの胡美芳である。彼女の経歴や活動の詳細については、また活字にする時に記したいが、ここでは、彼女が和歌山のどこに住んでいたかについてのみ触れる。 彼女がどこに住んでいたのかについては、実は自伝『海路遥かに』に詳しく記されている。和歌山市吹屋町の理髪店であること、家の前には広い道路があり、すぐ裏が和歌川だったこと以外に、以下のような記述がある。 隣の安田モータース(運送店)の敬子ちゃん、その隣の川崎(靴屋)の栞(しおり)ちゃんと弟の儀一ちゃん、裏の家に住んでいた小南(こみなみ)の千代ちゃん・稔ちゃん姉弟、斜め向かいの粉屋の子で、一つ年上の前田の政ちゃん、その弟で私と同い年の禎ちゃん、磯野(溶接屋)の茂ちゃんらがいつも一緒だった。 そして、『海路遥かに』には、同書が出版される前年の1984年、45年