日本的雇用慣行がなかなか変わらないのは、それが均衡解として安定しているからだ。でもナッシュ均衡は、いったん成立すると未来永劫変わらないというわけではない。 左側通行と右側通行を変えるのはものすごく大変だ。でも沖縄では、敗戦による占領で交通ルールがアメリカと同じ右側通行になり、本土復帰6年めの1978年7月30日に左側通行に戻された。このときは、わずか8時間ですべての道路標識・標示が変更されたという。 ここに、ナッシュ均衡のもうひとつの特徴がある。それはきわめて頑健だけれど、いったん状況が変わると一瞬のうちにもうひとつの均衡解に移ってしまうのだ(右側通行と左側通行が混在することはない)。 雇用慣行がナッシュ均衡だとすれば、日本的雇用がアメリカ型になったり、アメリカ的雇用が日本型になったりすることも考えられる。どのような条件で、このような変化が起きるのだろう。 面倒な説明は省略するけれど、青木