動物倫理の入門書は、日本ではつい最近までほとんど見られなかった。代表的な論客の名は伝わっていても、その議論を詳しく知る専門家が不足している、という事情がその背景にある。そうした中、伊勢田哲治氏は同分野の論争に精通する稀有な研究者であり、2008年には大部の倫理学概論『動物からの倫理学入門』で、動物倫理学に用いられる各種理論を仔細に解説している。本書『マンガで学ぶ動物倫理』(化学同人、2015年)は、初めて動物倫理に触れる人々を対象に、この分野で扱う諸問題のやさしい導入を行なうことを企図した入門書と考えられる。 本書の特色でまず気づくのは、その読みやすさだろう。軽快な漫画と平易な解説を交えた構成は、難しい書籍を読むのが苦手な層にも接しやすく、気楽に読み進めて読了できる。動物問題について考えたことがなかったという人々が、抵抗なく気づきの機会を得られるつくりになっている。 さらに、トピックの幅広
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