そんな研究が国立精神・神経医療研究センター(NCNP)で進んでいる。同センター神経薬理研究部の木村英雄部長らの研究グループは、硫化水素が体内でより効率よく生成される新たな経路を発見し、1月22日、英国のオンライン科学誌に掲載された。 硫化水素が哺乳類の脳に存在することは、1989年にカナダの研究者により初めて発表された。この報告をきっかけに、当時、米カリフォルニア州の研究所にいた木村部長が、ラットの脳で硫化水素が生成され、海馬での記憶増強に関わっていることを突き止めた。 現在進めている研究で、木村部長のグループは、腎機能に障害を持つマウスに、D―システインというアミノ酸を与えたところ、腎臓で硫化水素が生成され、症状が著しく軽減したことを発見した。 これまで、体内でL―システインと呼ばれるアミノ酸から硫化水素が生成されることはわかっていたが、D―システインは、腎臓内でL―システインよりも80