なぜ人類は貧困を撲滅できないのか。社会学者の宮台真司さんは「人間社会には『構造的貧困』というメカニズムがある」という。大学院大学至善館理事長の野田智義さんとの対談をお届けしよう――。 ※本稿は、宮台真司・野田智義『経営リーダーのための社会システム論』(光文社)の一部を再編集したものです。 「構造的貧困」のメカニズム 【宮台】われわれの社会では、よかれと思って始めたことが思い通りにいかなかったり、予想もしていなかった悪い結果を招いてしまったりすることがしばしばあります。しかも、一度そういうことが起きてしまうと簡単に元に戻すことはできず、場合によっては半永久的に変えられない可能性もあります。 そのことをわかりやすく説明しているのが「構造」という概念です。開発経済学の研究者として有名なスーザン・ジョージは、日本では1980年に翻訳出版された著書『なぜ世界の半分が飢えるのか』(小南祐一郎・谷口真里