一人のお母さんから、とても大切なことを教えられた経験があります。 そのお宅の最初に生まれた男の子は、高熱を出し、知的障害を起こしてしまいました。 次に生まれた弟が二歳のときです。 ようやく口がきけるようになったその弟がお兄ちゃんに向かって、こう言いました。 「お兄ちゃんなんてバカじゃないか」 お母さんは、ハッとしました。 それだけは言ってほしくなかった言葉だったからです。 そのとき、お母さんは、いったんは弟を叱ろうと考えましたが、思いなおしました。 弟にお兄ちゃんをいたわる気持ちが芽生え、育ってくるまで、長い時間がかかるだろうけど、それまで待ってみよう。 その日から、お母さんは、弟が兄に向かって言った言葉を、自分が耳にした限り、毎日克明にノートにつけていきました。 そして一年たち、二年たち・・・しかし、相変わらず弟は、「お兄ちゃんのバカ」としか言いません。 お母さんはなんべんも諦めかけ、叱