ビオラ、エンダイブ、レッドオゼイユ……。農園のハーブでアーチを描き、梶谷譲にはブーケを持ってもらった。日に焼けて骨張った手とのギャップが際立った 広島県南部の三原市の山あいに「梶谷農園」はある。近所の農家の男性(44)は「変わったもん作って稼いどるらしいと噂になっとった」と笑うが、実際、なんの変哲もない35のビニールハウスの中で育つ「葉っぱ」に、世界の料理人が惚れ込む。取引先は北海道から宮古島まで150軒。待機リストには、その倍の300軒が名を連ねる。ハーブのためだけに米国から来日する芸能人や「農園ごと買いたい」と頼む投資家もいる。 梶谷が米粒ほどの大きさのハーブを摘み取り、手のひらに乗せてくれた。口に入れると、鮮烈な苦みが広がる。「今の、セロリの芽ね」。オイスターリーフは生ガキの味そのもの。鮮やかな赤のナスタチウムの花は、つんとくる辛さ。「おいしいって基準がない。だから香りや色、かわいら