〈教育を受けた若者が、定職もなく街にあふれ、庶民のなけなしの預金は減る一方。景気が伸びても、給料は上がらず、物価だけが上がった。悲しいかな、これが、資本主義の本当の顔である。/『資本論』をいったん遠くに放り投げた日本人は、いま再び拾い上げ、ページを開く必要に迫られている〉(本書見返しより) どうしていまさらそんな古臭い本を読もうというのか。なにしろ第一巻があらわれたのは1867年のこと。だが、残念ながらこの書物は、いまなお新しい。なぜなら、資本主義が、経済成長や富を生み出す一方で、それと裏腹に搾取や貧困を生み出し続ける限り、そのカラクリを見抜こうとする『資本論』もまた意義をもつからである。 それならさっそく読もうじゃないか。と言いたいところだが、困ったことにこの本、お世辞にもとっつきやすいとは言えない。 まずその分厚さ。現在手軽に手に入る岩波文庫の邦訳書は全九分冊ときている(原書でも全三巻
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