先日、鉄道模型博物館に行った。帰ろうとしたら日産の大きなショールームがあった。でかいフロアに、エンジンはかからないがいろいろスイッチが入ったりするくらいの状態のカーがたくさん置いてあった。ちょっと寄ってみた。けっこう人がいて、思い思いのカーに乗り込んで座ってハンドルを握ってみたりしている。カーのゲームに興じている高校生などもいる。そこかしこからカーのドアーを開けたり閉めたりする音が聴こえる。べつにカーの店員が寄ってくることもないから気軽なものだ。そこでおれと女は買えもしない高級カーやスポーツカーに乗り込んではシフトノブをいじったり、ウインカーを出したりした。 カー。おれは子供のころ、いや、大学に入るくらいまでは自分のカーというものをいずれ所有することになるだろうと信じて疑わなかった。そういうものだと思っていた。おれのものではなかったけれど、イギリスの小さなカーで女と奥湯河原の温泉旅行なんか