大事な用があるという彼女の連絡を受けて、喫茶店のいすに座ってから十分がたった。 彼女は、うつむいている。 辛抱強くまっていると、彼女がその年のわりに幼く見える顔を上げた。 やがて口を開く。 いやな予感がする。 すごく。 なんだか聞きたくないことを聞きそうな気がする。 夜な夜な動き出しては校庭を測量する、間宮林蔵の銅像の話を聞いたときと似ている。 そのせいで、高校時代は夜の校庭に近づくことさえできなかった。 「妊娠したかもしれません・・・、わたし」 間宮林蔵なんて目じゃない。 頭がよくて、スポーツができて、何より顔がいい。 これでもてなきゃ嘘だろう。 つまり、そういうわけで、ボクはもてる。 唯一の欠点は、名前くらい。 すなわち、「長嶋茂雄」。 今は亡き(生きてるんなら殺してやりたいが)糞親父につけられてしまったらしい。 数十年前ならいざしらず、今となっては恥ずかしい名前になってしまった。 も