この3月。わたしの身体にガンが出来ていた。ガンの心配なんて未だ何十年も先の事だと思っていた。 もし余命宣告が下ったらば、「これを遺影にしなさい」と家族には言い付けようと考えて、わたしはこの絵を急いで仕上げた。 *1 腫瘍発見前から、油彩混合技法の習作として描いていた小品だ。元の絵は本文横に貼られたアイコンのペン画。服の皺を綺麗に描く為に、自分でポーズして写真に撮り、それを見てデッサンしたものだった。この「人形使い」を遺影に選んだ経緯は、東京から関西の自宅に移動する距離の間に、あった。 腫瘍のしこりを発見したのは自分自身だった。すぐに東京の医者を探しに行った。その時、九十九里浜のホテルに一人で居たのだ。 九十九里に着いて一泊した翌朝、風呂に入ろうとした時、消しゴムそっくっりな堅さと弾力の玉が皮下に埋まってるのに気付いた。「消しゴム状の触感」はすぐガンの知識と結びついた。にも拘らず、大鏡による
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