本稿では、現代における「製品の複雑化」という問題を、設計論の観点から探索的に考察する。具体的には、企業が市場に供給する製品を、「人工物」(設計されたもの)と解釈し、それが複雑化・簡素化する諸要因と企業の対応について分析する。 一般に顧客の要求機能や社会的な制約条件(環境・安全対応など)が高度化・複合化すると、モジュラー化による対応は難しくなり、製品はインテグラルかつ複雑なものになりやすい。 こうした「製品=人工物」の複雑化に対して、企業は複数の補完的なアプローチで対応している。(1)まず、製品アーキテクチャのモジュラー化が複雑化に対抗する有力な手段とされるが、何らかの理由で徹底したモジュラー化が難しい製品の場合、(2)従来型の、実物試作により機能検証を行う試行錯誤的な製品開発の能力を高めることに加えて、(3)開発支援IT(たとえば3次元CADなど)を活用した試行錯誤的なデジタル開発、(4)