大船にガタがきていた。そこに暴力があったことが可視化され始めていた。大船によって、傷つけられているものが大量にあったのだ。だから、人々は小舟に憧れを抱いた。世間とか組織の価値観を離れて、「いかに生きるか」を自分で決める。小さな物語はその頃、解放の物語だったのだ。だから、心はキラキラと輝いていた。 それから20年経った。もはや小舟で航海することは解放でも何でもない。望んでいようといまいと、誰もが小舟で生きざるを得ない世界になったからだ。もう守ってくれる大船は存在せず、みんな小舟で大海に放り出されるようになった。 (東畑開人『心はどこへ消えた?』文春文庫、2025) こんばんは。大船からイメージするのはフジテレビやジャニーズ事務所です。心がキラキラと輝いていたという解放の物語からイメージするのはフリーターという横文字がまだカッコいい響きをもっていた90年代くらいの《その頃》です。大船という大き

