泊まっていたビジネスホテルから駅へ向かう途中、前を通っても、そこがあの映画館があった場所だということにはしばらく気づかなかった。交差点で信号待ちをしているとき、見覚えのある風景だと思って振り返った。 そこには、超高層の巨大なビルが建っていた。ガラスが空を反射して、青く光っていた。 二人は、連絡も途絶え、疎遠になっていた。たまに、あの映画館で観た映画のことを思い出すことがあった。あのときさー、と誰かに話したくなったが、あの映画館にいっしょに行ったもう一人以外には通じない気がして、やめてしまうのだった。 (柴崎友香 著『百年と一日』筑摩書房、2020) こんばんは。先日、パヤル・カパーリヤー監督の映画『私たちが光と想うすべて』を観てきました。高校の遠い遠い先輩である是枝裕和監督が「自分だけの宝物にしておきたい」と絶賛していたという情報を目にし、さらには映画の舞台が遠い遠い昔に足を運んだことのあ

