西洋医学では健康と病気を二律背反的に捉える傾向があります。つまり、病気がなければ健康、健康でなければ病気というように絶対的に評価しがちです。「病気」そのものを治療の対象と考える西洋医学では、病気と健康の間のどこかで線を引かないと治療を開始できないと考えるからです。 ところが東洋医学では、病気と健康は連続していて、病気でなくてもその健康状態は様々であることに早くから気づいていました。健康の状態には高い状態から低い状態まであって、それが低下すると病気の状態に至るという連続的な見方をしています。これは「病気」ではなく「病人」を診るという視点を重視するからです。 東洋医学が健康と病気を連続的に考える理由の一つは、物事全てを相対的に認識する中国哲学の自然観と関係がありそうです。例えば、この世に存在する全ての物質や自然現象を「陰」と「陽」に分ける考え方があります。太陽、男、昼、火、明、熱は「陽」に属し