夕方五時、隣町からの帰り道。 市内に入ると途端に車が混みだした。 今日の 月の出 はそろそろじゃなかったか。 満月のはずだ。 赤信号のたびに空を見上げながら車を走らせる。 東の空ごく低く ふいにビルの間に見えた月 思わず息が止まった。 夕空に悠然と姿を現した月は異形 怖いぐらいに大きく 不安をかきたてるかのように美しく その気高い姿に 魅入られてしまう。 今日はとうとう車を止めてしまった。 水辺の公園の駐車場で ささやかな土手をかけのぼってみたが、月はまだ建物の影だ。 昇ってくるのを待つ時間はないが、ここで少し頭を冷やした方がいい。 あまりの美しさにどこかが痺れていたから。 空が暮れて行く。 木も鳥も人も黒い影になって行く。 夕空はなんて刹那的なのだろうか。 じわじわと濃さを増していく空。 宇宙が降りてくる気配。 この美しさをとどめておけないことが、つらくて苦しい。 美しくて苦しい。 神様