エジプトは、圧力釜のような状態だった。ここ何十年か立ち止まったままで経済はちっともよくならないし、貧富の差は広がる一方だったからだ。これにチュニジアの政変から火が移り爆発した。民主主義の国ならば、経済がこれだけ悪ければ、政治が変わる。だがエジプトは、強権体質で警察が強く、治安当局が変化を求める声を押さえこんできた。政治が変わらないから圧力の抜け穴がなかった。 ナセル元大統領はスエズ運河を国有化した。サダト前大統領はイスラエルと第4次中東戦争を戦い、そして平和条約を結んだ。だがムバラク大統領は30年間何もしなかった、という評価だ。 これまでのエジプトの政治の選択肢は、ムバラク政権かムスリム同胞団かとされてきた。国民にも、そして米国にも、支持できる真ん中には組織はなかった。その真ん中にいた孤独な群集がネットでつながり孤独でなくなった。ネットを使える世代がまず動きだし、ほかの人々がついてきた。新