私はマンガ作品が人間の価値観に影響を与える可能性を拝しない。価値観は社会的に構成される部分が大きいので、社会に流通するマンガ作品もその一部として機能しているだろう。私たちの性/性役割についてについても、マンガ作品が差別を深めたり、差別に抵抗する力になったりすることはあるだろう。その上で三点を述べておく。 (1)マンガだけが影響を与えるわけではない (2)「性役割の固定化」と「性暴力」をイコールではない (3)「表現物を理由にした性暴力」の言説の危険性 (1)マンガだけが影響を与えるわけではない 私はかねてから、性差別の抑止のために表現規制をするのであれば、性差別的な記述のあるマルクスやヘーゲルの文献についても検討すべきだと思っている。私は哲学・思想の学会に出席するが、そこではマルクスやヘーゲルの研究者が差別発言を繰り返している。男女二元論による本質化を行い、学会で「女性の本質は出産すること
