疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。そのためにわたしの帰省は二年ストップした。わたしの出身地は大きな地方都市だが、それでもやっぱり「東京から娘が帰ってくるとなると人目が気になる」と母が言ったものだから。 だから今年は年始のほか連休にも帰省した。いつもは盆正月だけだから、久しぶりに五月の故郷を訪れたことになる。 そのためにわたしは久しぶりに蝶々の羽化を見た。わたしの父は毎年春にアゲハチョウの卵を採取して育てる習慣を持っているのである。 父は昭和然とした猛烈サラリーマンをやっていたが、現在は定年退職し、嘱託勤務をしながら、母とふたりで老後を過ごしている。そこいらによくいる普通のおじさんというか、初期おじいさんである。 彼は昭和的サラリーマンにはあるまじき振る舞いをすることがあり、それは主にわたしのためだった。わたしが病気をしたといっては会社を休み、わたしの参観