私にとっての母は、祖母。 10歳のとき、1年だけ祖母と共に暮らした。 この、たった1年が、その後の人生の支えとなった。 祖母のしつけは厳しく 何度も灸(やいと)を据えられて 背中にはいつもヤケドの跡が残っていた。 夏になると、海やプールで友達に揶揄された。 左利きを無理やり、右利きに矯正され トレードマークだった八重歯は糸をからめて無理やり抜かれた。 学校で女の子のスカートをめくって泣かせたときは はたきの柄で、手の甲を何度も叩かれてミミズ腫れになった。 私に初めて本を与えたのも祖母だった。 少年少女文学全集と百科事典。 娯楽のない瀬戸内の島で 雨の休日は、本が宝物になった。 1年が過ぎ、祖母のもとを離れた後も 「母の日」には祖母に贈り物をした。 カーネーションとか、裁縫道具とか 小銭で買えるものしか贈れなかったけれど。 祖父が海軍、父が海上自衛官だったが 祖母が私の進路について口にしたこ