■はじめに歴史的に見ると、革命を成し遂げた政府がまず行うことは、刑法典の制定です。新しい理念にもとづく刑法典を制定して、革命の混乱によって乱れた秩序を回復しようとします。明治政府にとっても、刑法の制定を含む、行刑制度の確立こそは何にもまして急務なことでした。そして、刑罰こそは国家権力の直接的な行使という側面をもっていますので、どのような内容の刑罰を、どのような方法で執行するかということには、その時々の権力の本質が明瞭に刻印されることになります。 明治政府にとっては、特に〈絞首刑〉に対するこだわりがありました。そこには幕府法を廃して千年以上も前の朝廷律を復活させるという、明治天皇の特別な意気込みがあったのです。 ■維新後に制定された刑法典と絞首刑維新後、明治13年の近代的な刑法典(旧刑法典)までに、明治政府が制定した刑法典は3つあります。 〈仮刑律〉(かりけいりつ) 明治元年〈新律綱領〉(し