「知的財産を守るための権利には,特許も実用新案も,著作権もある。今も選択の自由があるのだから,現行の特許制度と異なる新しい特許制度を新設しても,適切に運用できるのではないか」――。 『日経エレクトロニクス』2010年3月8日号の特集「消える特許」をまとめるために取材した経済産業省 経済産業政策局 産業組織課長の奈須野太氏は,このようにおっしゃっていました。同氏は,エレクトロニクスや情報通信などのように多数の特許が複雑に絡み合う技術分野では,差し止め請求権のない特許権で技術を保護する,いわゆる「ソフトIP」の提唱者の一人です。製薬などのように製品が少数の特許から成る技術分野は従来通り差し止め請求権のある既存の特許権で保護するが,情報通信などの分野のために,報酬請求権を持つ新しい特許権を選べるようにするという特許制度案を提唱しています。 筆者の頭の片隅に,ずっと引っかかっていた言葉があります。