注)この文章は「SIGHT/10号」2002年1月15日発行(ロッキング・オン刊)に掲載されたものです。執筆に当たっては、編集部より「風の谷のナウシカ」以前~初期の宮崎駿監督の作風について考察して欲しいという要請があり、これを受けて書かれたため、近作についての記述は少な目です。 1. 思想的端緒 ●出発点 「現在の日本の漫画映画の殆どすべては主として教育映画方面の需要に対して製作されているので、企画はまず少年に対する善意から出発する」 これは、東映動画の創始メンバーの一人であり、日本初のカラー長篇動画「白蛇伝」(1958年)の演出を担当された藪下泰司氏(故人)の著作「漫画映画とその技術」(三笠書房)に記された言葉である。(大塚康生氏著「作画汗まみれ 増補改訂版」2001年 徳間書店より) 筆者は、「風の谷のナウシカ」が公開された1984年に藪下氏にインタビューを試みたことがある。氏はその際